今回は前回のブログの続きになるので、
まだ読んでいない方は先に👆読むことをおススメする。
私がビジネスマナーを教えていた際、
「名刺はその人そのものだという認識を持って大切に丁寧に扱いましょう」
と言っていた。
会社に戻って整理をする際にメモを残したり、
その人の会社の書類と一緒に留めたりすることはよいが、
その人の目の前では名刺をその人そのものだと思って尊重するのがマナーの基本だ。

名刺というキーワードで思い出されるのが、
「長野県 田中康夫知事 名刺折り曲げ事件」
この事件が起こったのは、
2000年なので今から25年前のこと。
まず、この事件を語る前に、
長野県知事になった田中康夫という人について簡単に説明をしておく。

彼は作家である政治家である。
長野県知事のほか、衆議院議員、参議院議員も歴任している。
まず彼を有名にしたのが作家としてのデビュー作で1980年に発表された
『なんとなく、クリスタル』
この作品は衝撃的だった。
まず主人公が、南青山の高級マンションに暮らす女子大生で、モデルもやっている。
両親は海外赴任中で留守のため、大学生兼プロのミュージシャンと同棲していて、
ブランドものを身に付け、高級なレストランで食事をする。
ヨーロッパ車に乗り、流行の最先端を突っ走る。
この作品がこのあと1980年代の”トレンディ・ドラマ”に繋がって行く。
田中康夫はこの作品で「文藝賞」も受賞するのだが、
なんせ小説の内容が「チャラい」
一橋大法学部卒業のエリートなのだけれど、
この小説とその後のマスコミに現れたときの態度などで、
本人も「チャラい」という印象を与えていた。
その後、もともと家族で長野に住んでいたこともあって長野県知事に立候補。
作家として培った知名度と、
今までの政治とは異なるアプローチで県政改革を訴える姿勢が支持されて当選となった。
そこで気分がよくないのは、それまで県政を行っていた職員、とくに管理職。
いわばぽっと出のタレントのようなチャラい知事に指示されてたまるか、
といった気分だったのだろう。
田中知事が初登庁の際、知事は名刺を配りながら各部署に挨拶をしていた。
そんな時、企業局長のF氏がもの凄くなれなれしい口調で苦言を呈しだした。
F氏は、
「知事ねえ、社員に名刺を渡す会社は倒産する会社ですよ」
と言った。
その言い方が、ビジネスの場とは思えない、
しかも上司である知事に対する話し方とか到底言えない口調。
田中知事がなぜそうなるのか?と尋ねると、
F氏は、
ここは県庁だけど会社でいうと知事は社長。
社長が社員に名刺を渡すというのは、
社長である自分(知事のこと)を知らない社員しかいないということだから
という説明をした。
これに対し田中知事は、
新任であるし、自分のメールアドレスも名刺にあるので、
挨拶がてら名刺を渡していただけだと返答し、
「じゃあ、私は私なりの、ということでお受け取りください」
と言って名刺を渡した。
するとここで事件が起きた
F氏は
「これはないことにさせていただいてよろしいですね」と言って
知事の目の前で名刺をふたつに折り曲げた
田中知事は、いわゆるタレント知事だったので、
初登庁の時に多くのマスコミを引き連れていた。
そのため、名刺折り曲げの様子や、
その後にF氏がべらんめい口調で
「オレは小説なんて大嫌いだから全然読まねぇーし。大いにやろうじゃねぇかっ‼」
と半ば喧嘩を吹っかけた様子は
すべて映像に記録され、すぐさまテレビのニュースで放映された。
それまでのケンカ腰の態度や口調、
そして名刺折り曲げた瞬間の映像はすごいインパクトだったため
この様子は瞬く間に話題となり、ワイドショーなどでも取り上げられた。
これが大問題に。
鼻息荒く宣戦布告をした企業局長F氏だったが、
県庁はその日から1万件以上の苦情電話に対応する事態となった。
職員は日曜日も返上。
職員仲間からも大ブーイング。
企業局長F氏は、自分がしでかしたことの重大さに意気消沈。
初登庁のときの勢いは全くなくなり、
神妙な面持ちで謝罪会見を行った。
そして知事の前で名刺を折り曲げてから4日、
彼は辞表を提出した。
*田中知事はこの辞表を慰留した*
これを見ていた私は、
(長野が悪いわけではないが)
県庁という小さい世界で、「社会的世間知らず」で生きて来たオジサンの一番ダメなところが出たな、と思った。
官僚や役人がみなさんそだとは言わないけれど、
人を見下したような態度をとる役人、
市民や県民の税金でお給料をもらっているくせに、
なんかふてぶてしい態度の職員がこの時代はまだまだいたのだ。
私が日本で講師をしていた時に相手にしていた会社は
名前は控えるが「元国営」というところが多かった。
実は、一般企業と比べると、会社の根っこの根っこの根っこに
まだ「役人っぽさ」というか「役人商売が抜けない」そんな体質があった。
少し誇張して言うと
仕事やサービスを「お客様のため」というよりは
「私たちが客に~してやってる」的な感覚が少し残っていた。
この名刺折り曲げ事件も、
そんな体質だった県庁の職員が起こした大マナー違反
「マナーなんて別に守らなくても罰せられないでしょう」
と甘く見られがちだが、
ちょっとしたことが大問題に発展することもある。
マナーは法律違反ではないけれど、
人間が社会で生きて行くためには必要なスキルなのだ。
もしあなたが文明人で、
ちょっとした行動で損をしたくないと思うのであれば、
最低でも”人を不快にさせないマナー” は身に付けておくことをおすすめする。
気を付けましょうね。
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